ギルドの依頼

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 俯くセリーナ。自分の言動について考えているようだ。眉間に皺を寄せ、手を顎にあてていた。 『助けなかったのは一応謝っておこう。だがあの状況で我が助けていれば、お嬢さんらにも被害が及んでいたし、そもそも我は原則人間とは関わらないのだ。つまり我は、お嬢さんらを助ける義理はない』  セリーナも小さい声で「そうね……」と呟いていた。その後、すぐに、 「ごめんなさい!」  と謝っていた。 『……よい。そこで素直に自分が悪いことに気づいたお嬢さんは、二度と同じミスを繰り返さないだろう。これで成長できたな』 「……はい」  なんかドラゴンがスゲー慈悲深い、神のような存在に見えてきた。決して説教しているわけでなく、何かを説いているようだった。 『ふっ……と言っても我が助けなかったのは大本の理由は他に有るんだがな』 「えっ?」  セリーナが説明を求めるかのような顔をしていたが、ドラゴンは見向きもせず、俺のことを真っ直ぐと見てきた。 『お主、我に会ったことがあるだろう?』  突然爆弾が落とされた。そのくらい、ドラゴンの言葉には重みがあった。頭の中で何度もドラゴンの言葉が木霊する。自分の記憶に検索をかけるが、ドラゴンに会うという奇想天外な出来事はなかったはずだ。 「……何を言っているのかわからないな」  なるべく冷静を装って答えた。 『ほう。しらばっくれるのか。確かに顔を隠しているのから判断すると、妥当な判断だ。だが“プロミネンス”を使っておいて、我が気づかないとでも思ったのか?』  ごめん。プロミネンスってなんそれ。太陽の紅炎? 「ルア。プロミネンスってなんだ?」 「……俺が聞きたい」 『お主……。それは本気で言っているのか?』 「ああ」  答えるとドラゴンは、しばし何かを考えるように目を伏せた。そして考えがまとまったのか、目を開けて言った。 『ならば名前はどうだ。確か名前は……ル、ル、ルー……』 「ルアだろ」  アレンのお陰で助かったが、俺はこのときヒヤヒヤしまくりだった。自分の記憶にはないが、このドラゴンは俺の名前を知っているのではないかと。 『ルア? はて、そんな名前ではなかった気がするが』
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