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なんだ、この頭痛は。
なぜだかわからないが頭の奥がチクチクと痛む。“黒虎”……。よくわからないが無性にジンを殴りたくなってきた。ジンが関係しているのだろうか。
「どうしたルア。難しい顔して」
「いや……なんでもない」
俺はアレンから目を反らし、ドラゴンの方を向いて別れを告げる。依頼とはいえ、夜中にいつまでも神域に居るのはよろしくない。今ここは魔物と魔獣の住み処なのだから。
ドラゴンも『うむ』と頷き、起こしていた体から横になる形にする。夜ももう遅い。今から寝るのだろう。
ドラゴンは目を閉じ丸くなる。たが何を思ったのか、突然目を開けてこう呟いた。
『村まで転移してやろう』
いきなりの発言に一同目が点になる中、ドラゴンは有無も言わせず転移をしたようだ。視界が光に飲まれる。
次の瞬間、目の前にあるのはドラゴンの巨体ではなく、最初に待ち合わせ場所にしていた宿屋だった。
つくづく古龍というのは化物だと再確認したのだった。
★ ★ ★
神域にゆったりと響く足音。緑色の目にキラキラと月明かりに映える銀髪。人間にしてはやけにとがった耳。セミロングの髪は先端に近づくにつれ、くるくるとカールしてある。
夜風で冷え込む神域を薄手のワンピースのみで悠々と歩いており、周囲にいる生物という生物は、彼女を恐れるかのように道を譲って行く。
ただドラゴンを除いて。
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