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『ん? 今日は来客が多いな』
「そう」
『久しいな、ベラ。何年ぶりだ?』
「千年弱ぶり。私のことは覚えているのに“ルー君”のことは覚えてないのね」
『大戦の前以来か。……で、ルークンとは誰だ?』
「さっきセトが話してたお面を着けた少年」
『ああ、ルークンという名前だったか。ルアというのはどこかおかしいと我も思っていたのだ』
(それも違う……)
『ところで何をしに来たのだ?』
「暇潰しとお願い」
『お願いだと?』
「ルー君に【メモリーアルトレイション】したのは私。次ルー君に会ったらルー君の記憶が戻るような言動は避けて欲しいの」
『ベラほどのものが“記憶を改変”させたのか。禁魔法とは、余程込み入った事情があるらしいな』
「ええ。記憶が戻るとルー君、壊れるから」
『……心得た』
「ありがとう。ちなみにこれは“彼”の願いでもあるのよ」
『レインか……。会えるならもう一度会いたいものだ』
「そうね」
『レインは…………情に厚い男だった!』
「ええ」
『我がまだ青い時、いつも助けてくれたのは彼だった。我の……我のために命懸けで煉獄龍ナウルを倒してくれた』
(レインにとっては“龍装”を得て好都合だったけど……)
『彼の、最期はどうだったのだ?』
「……幸せそうだった。“弟子”に愛されて」
『そうか……』
「じゃあそろそろ行くわ、セト。また千年後に会いましょ」
『……我の寿命はあと五百年だ。千年は厳しい』
「あらあら、短いわね」
『ベラが長生き過ぎるのだ……』
そしてまた、神域に静寂が訪れる。
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