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ドラゴンに村へ転移され、シスルはアレンに自宅まで運ばれた。家から学校に通っているのだ。
そのまま執事たちによって自室のベットまで運ばれ、翌朝、つまり今目を覚ましたところだ。
現在七時。
学校に余裕で間に合う時刻だが、シスルは今日、学校に行く気は毛頭(もうとう)ない。
今日こそ父上と“けり”をつける!
パシッと自分の頬を両手で叩き己を鼓舞すると、ベットから降りて自室と廊下を繋ぐドアを開けた。
廊下に出ると掃除をしていたメイドと目が合う。いつもシスルが怒鳴り散らしている同い年のメイドだ。父上の知り合いの子らしく身寄りがいないため、家(うち)がメイドとして雇っている。
「おはようごさいます、シスル様。朝食の準備が出来ております。今、案内致しますね」
おそらく……いや、間違いなく、シスルのことを恐れ、嫌っているだろう。笑顔がぎこちなく、八つ当たりで彼女に手を挙げた回数は数え切れない。
――ボクはそんなクズだ。
とシスルは思った。
「ああ、おはよう……。いつも、いつも、本当に……すまない」
そう言ってシスルは、傷つけた彼女の顔の傷に触れる。淡い光が彼女を包み込み治癒魔法を施した。痣が数秒で消える。
彼女は目を見開き口をパクパクとさせていた。驚くのも無理はない。シスルはそれだけのことを毎日毎日しているのたがら。
「朝食はまだいい。案内もだ。それより父上がどこにいるか知らないか?」
念のために言っておくが、自分の家を案内なしで歩けないほどシスルは馬鹿じゃない。うんっと小さい頃、迷子になって母上をえらく心配させただけだ。その事件依頼、案内役をシスルにつけるようになった。
もう亡くなってしまったが、過保護で子煩悩な母親だったな。……父上と違って。
「あのーっ、シスル様。だ、旦那様なら書斎に居られると思います。案内致しますね……」
シスルは母上のことを思い出して少しボーッとしていたようだ。心配そうな目で見られてしまった。
「案内なら必要ない」
「も、申し訳ございません!」
彼女はそう言うと土下座をし始めた。シスルはやめさせるために近くによる。すると彼女の体が強張り、震えていた。いつものシスルなら蹴り倒しているからだろう。
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