日常

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 シスルは書斎までの道のりが、今まで体感したことないくらい長いと思った。しばらく歩くと、シスルは正方形の形をしたドアのぶが二つある書斎の前に着く。木製でできた大きなドアは、魔王城へと誘(いざな)うかのような威圧と威厳を感じた。  コンコン 「父上、シスルです。今お時間よろしいでしょうか?」 「良い……入れ」 「失礼します」  シスルは意を決して書斎に入ると、父上が机の上で忙(せわ)しく羽ペンを走らせていた。顔を書類に向けたまま目だけでこちらを見る。眼鏡の隙間から父上の眼光が覗き、蛇に見込まれた蛙のようにシスルは動けなくなった。 「その様子から見ると……解けたか」 「やはり父上だったのですか。ボクに“禁魔法”をかけたのは!」 「仕方がないだろう。お前は母親に似すぎだった。ゼフォード家の長男で時期当主のお前には“冷徹”さというものが足らん。悪いがまた“禁魔法”をかけさせてもらうぞ」 「そう簡単に行くものか! ボクはこの呪縛を解き放って自由に生きる! 【inferior・ライトニング】!」  稲妻の奔流が父上に向かっていく。下級魔法とはいえ全力で魔力を込めた。当たればひとたまりもない。 「甘いな、【inferior・マジックシールド】」  しかし障壁魔法によって阻まれた。もっと強力な魔法を放たなければ突破できない。シスルは上級魔法の詠唱を開始した。 「戦闘中にそんな長々と詠唱して何もしないとでも? その考えが甘いのだ! 【surperior・サンダーバインド】」  しまったとシスルが思ったときにはもう手遅れだった。両手足電撃を帯びたロープ状の魔法に拘束され、自由を奪われる。父上の意思によって電撃が体内を駆け巡った。
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