日常

5/23
前へ
/353ページ
次へ
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!」 「苦しいか? 私は自分の家のためなら息子を傷つけ……“妻を殺(あや)める”ことだってできるぞ」 「――っ!? は、母上を殺ったのは貴様かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!」 「まったく……うるさい奴だ。呆れて言葉も思いつかん。……まあ良い。今すぐ“前のよう”に戻してやろう」 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!」 「【taboo・マインドコントロール】」  こうしてシスルは前のシスルに再び戻ってしまった。 「はぁ、世話の焼ける息子だ。部屋に“細工”をしておったのにケルムが切れてしまったわ。さすがは禁魔法といったところか……」  シスルの父親、キース・ヴァン・ゼフォードは独り言をぽつんと呟いた。息子を一瞥するとまた言葉を紡ぐ。 「王の意思とはいえ学園などという場所に通い、何かを刺激されて禁魔法が解けたか。今までより厳重注意だな」  その後、キースは執事を呼び、シスルを運ばせる。執事は何も言わなかったが薄々感じ取っているだろう。家の主人は良からぬことをしていると。  キースは再び机にかじりつき、ペンを走らせたのだった。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加