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俺とゴルという男は酒場の前でお互い睨みを利かせていた。その周りを囲むように野次馬たちが群がっている。
中には酒場の前をたまたま通りすがった人たちまでいた。俺と同じ年くらいの人もいる。
「……参ったなぁ」
正直な話、俺は喧嘩をすることにとても後悔していた。さっきはつい昔を思い出してかっとなったが、よく考えれば、喧嘩を売る程のことでもでもなかった。
「どうしたひょろガキ。もしかして怖じ気付いたか?」
どうやら、俺の独白が聞こえたようだ。いっそのこと、「はい、そうです」と言いそうになったが、さすがにプライドというものがある。
だから……
「ふんっ」
鼻で笑ってやったよ。しかも、これでもかってくらい上から目線で。
すると、ゴルはゆでダコのように顔を真っ赤にして怒っていた。
「調子に乗るなよっ!く そガキャァ!!」
そう言い放つとゴルは抜剣した。思ったより手入れの行き届いた剣だった。
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