傭兵

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 俺は右足を下げながら左に身を傾け紙一重でかわした。そのすきに間合いを詰め、背負い投げの姿勢をとる。自分の腰を男の重心より下に入れ、おもいっきり投げた。  するとゴルはきれいに投げ飛ばされた。もちろん柔道でも何でもないので、手は離して投げている。 「ゴフッ」と男のうめき声が聞こえ、俺は内心呆れていた。これが元ギルドのBランクかと。酔っていたにしても弱すぎた。  俺は踵(きびす)を返し、酒場に戻ろうとすると「やっちまえー兄貴ぃー」という声が聞こえた。  軽く振り返ると、ゴルが立って剣を振り下ろしているところだった。普通なら俺が首を斬られて死ぬ、と野次馬は思っているだろうが、生憎(あいにく)俺はそんなに柔じゃない。俺は身体の奥底に感じる“力”を引き出した。  ガキィィィィィィン  俺は目にも止まらぬ速さで抜刀し、ゴルの攻撃を防いだ。群青色の軌跡を残しながら弧を描き、男の剣を弾き飛ばす。  そのとき見えた、驚いた顔を拝めながら、股に足を入れ内から外へと薙ぎ、足払いをかけた。  ゴルが倒れると同じに俺も一緒に倒れる。だが、ゴルが目を開けていた時には既に、俺は首筋に刀をあてていた。  ゴルと俺の顔の近さは、およそ10センチ。酒臭いのを我慢し、男に問う。 「このまま死を選ぶか? それとも……」  俺はここで一息つく。 「ガキに負けました、という汚名を背負って、降参するか?」
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