198人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
カイスがルーヴァスの手を掴んだ瞬間、ルーヴァスは手で印を結び、景色は変わって二人は中庭に転移していた。
そこで最初に二人の目に飛び込んで来たのは赤黒い液体だった。中庭の芝生を赤黒く染め、月明かりに反射している光景はまさに地獄。無論液体の正体は紛れもなく……血だ。
衛兵はほぼ全滅しており、残っている衛兵は敵と同じ10人。ガルド将軍たちを囲み、槍を前に出して身構えていた。倒れている衛兵は、まだかろうじて全員息があるようだ。
「全兵、槍を納めろ。こいつとは俺が話す」
ルーヴァスの言葉に対し、衛兵たちは槍を納めない。怒りのボルテージが頂点に達し、仲間が死んだと思っているのだろう。
「……俺に二度目はない。槍を納めて引かないものは……どうなるかわかっているな?」
次は殺気を込めて言う。すると、今まで怒りで誰の声も聞こえていなかった衛兵たちが、次から次へと槍を納め退却した。怒りよりルーヴァスへの恐怖が勝ったのだ。
ルーヴァスは容赦がないことで有名だ。自分の命令を聞かないもの、命令以外のことをしたもには罰が与えられる。……すなわち死だ。だからこそ部下からの信頼も厚い。身分が高かろうが低かろうが平等に接するからだ。
最初のコメントを投稿しよう!