魔法学園入学

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  ★  ★  ★  目を開けると俺は闇にいた。けして比喩表現ではない。試しに愛刀を抜き、自分の前に持ってきても、いつも蒼白く光る刀は見えない。手には刀の重量を十分に感じるというのに。  まさに一寸先は闇という状況だった。  そんななか遠くに小さな明かりが見える。それは徐々に俺の方へ迫ってきて、俺は一瞬で“それ”に囲まれた。  やめろ……!  “それ”は家を喰らい人の命を奪う……炎だった。  俺の周りは闇から一転変わり炎に包まれる。そこには村があり、炎は家々を燃やし、人々は逃げ惑う。そこに“アイツら”がやって来た。  やめろっ……!  この夢は何度も見ている。だからこの先の展開を知っている。そして今でも俺は、この夢を見ると昔のように弱くなってしまうのだ。  アイツらは、女、子ども関係なしに虐殺を繰り返す。もはや慈悲の欠片すらもなかった。  やめろぉぉぉ……!  だが、どんなに叫ぼうが関係ない。これは夢なのだから。  幼き俺は弟のナイトと一緒にいた。俺はただただ呆然としているだけ。ナイトはただただ俺に引っ付いて泣いているだけ。  そしてふと思う。 「逃げなければ……!」と。  本能で察してしまったのだ。 「このままでは殺される……!」と。  そういえば父さん母さんは無事だろうか。幼き俺はこんな状況にも関わらず、自分の心配よりも自分の親の心配をしていた。まるで下流を流れる川のように、俺は妙に落ち着いていたのだ。  そんなときだった―― 「ケッケッケッケッ。生き残り見ーつ・け・た」  そんな悪魔のような声が聞こえたのは。
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