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「お前も入学式に遅れた口か?」
「ああ」
「ならさっ、ならさっ。俺にいい案があるんだけど」
「なんだよ」
「よーし、見てろよ。【inferior・シャドーズハイド】」
少年が魔法を唱えるとその場から姿が消えた。だが気配で大体の位置はわかる。
少年はゆっくりと足音を立てずに俺の後ろに回ってきた。何をやっているのだろうか。
仕方ないので帯剣していた刀の鞘で腹を軽く小突いてやった。
「うぐっ」
少年は魔法を解き大袈裟にうずくまる。若干涙目なっていたので、思ったより鳩尾に入ったらしい。
「なんでわかったんだよ!?」
少し落ち着いた少年が訴えるように叫んだ。唾が飛んで来そうな勢いだ。
「なんとなくだ」
「なぁなぁ、アスナちゃん。俺見えてた?」
「いや、見えてないで……見えてないよ」
初めてアスナという子が喋ったが、恐ろしく声が小さいな。
「だよな」
と言った少年は疑わしげに俺の方を見る。翡翠色の目が、俺に謎の圧力を与えてきた。
「なんとなくだっ」
力のことを説明をするのはめんどくさいので、なんとなくを繰り返した。
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