散策

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 俺はこの広さでラファエル先生を探すことは、糸こんにゃくの海から一本のしらたきを捜すことより難し……くはないと思うが、困難極まりないと判断したので、毛ほどないこみゅ力を使っていた。  「あの、すみません!」 「ん、なんだね?」 「一年一組担任の先生(敢えて名前を伏せる)がどこに居られるかわかりますか?」 「……ラファエル先生か。彼は放浪癖があるからな。わしにはわからんな」 「……わかりました。他をあたってみます」 「そうか……。すまんね」 「いえ」  そう言って俺はそそくさと この場を立ち去る。  今の本当ははげているのに、懸命に髪を伸ばして「わしははげとらん」と言いそうな雰囲気の先生に話しかけたのは、これで10人目だ。  ほとんどが放浪癖があるから居場所はわからない、という答えばっかりだった。  中には教師全員の顔と名前が把握できていない先生もいたが……。  ざっと百人いるそうだ。このエンティーク魔法学園には。それならしょうがないと思ってしまう。  ……本当にいないなラファエル先生。めんどくさいから帰ってしまおうか。いや、呼ばれたんだから行かないと行けないだろう。  くそっ! こんなことならラファエル先生に、どこに居るか聞いとけば良かった。
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