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「ものわかりのいい子で助かるわ」
先生相手なら、どんな不良もいい子になるだろうよ、と思ったが口にはしなかった。命がいくらあっても足りなくなる。
「着いたわ。ここよ」
喋りながら歩いていたので正確な道順は覚えていないが、そこは今まで通ってきた廊下と、何一つ変わらない廊下だった。
「あの……」
「まあ、待ちなさい」
「はあぁ」
「私よ。開けてくれないかしら。ミュウ」
『ん? ああ、貧乳のねーちゃんか。了解、了解』
何者かの返事が聞こえたかと思うと、壁の一部がだんだん透明になっていき、やがて消えた。そこには道ができている。
「ありがとう、ミュウ」
『どういたしましてだぜ』
よくわからないが、ラファエル先生はこの先に居るみたいだ。
「さっきのは何だったんですか」
俺は疑問を口にした。壁が透明になる瞬間、桃色の何かが見えた気がしたのだ。
「あれはアイツの使い魔よ」
「召喚術のあれですか」
「そうそう、それそれ」
そしてしばらく沈黙が続く。俺も特に話すことがないので、無理に話しかけなかった。
暗い道を歩くこと数分。目的地であろう扉の前に着いた。
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