散策

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 バイオテロ(屁)を起こした後ルークは帰っていった。律儀にお礼を言いながら。誰がどう見ても心が籠ってなかったが。 「俺以外にセブンスセンスが使えるやつが居るとはな。……兄貴も姉貴も使えないのに」  このセブンスセンスという力にラファエルが気づいたのは約十年前。執事兼傭兵として働いていたときに、自分の中で魔法ではない別の力を感じた。  兄妹たちはラファエル以外、執事またはメイドの仕事を放棄し、みんなどっかに行ってしまった。噂じゃあ、他国にいると聞いている。  そのためセブンスセンスについて、誰にも相談できなかった。 「まあ世界は広いし当たり前か。……確かに他の誰かが、セブンスセンスの力を見つけてたとしても不思議じゃないよな。あーあ、ルークに会うまでは俺が“世界最強”かと思ったぜっ。おーお、恥ずかしっ! ……この分じゃあ、まだ俺より強いやつ居そうだな……」  ラファエルの兄妹たちは、末っ子であるラファエルが一番強いとは知らない。ましてや世間では、ラファエルは剣術しか能がない、落ちこぼれとされてきた。 「ふぁあ、ちょーねむっ。でもその前に“運動”してくるか」  そんな独白をしながら、ラファエルは窓から飛び降りて行った――
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