予選会

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「そう、なら頑張って避けて」  アスナの口調はいつより冷たかった。雰囲気が全く違う。俺はそれに驚き、また発言の意味にも驚き、素っ頓狂な声を出してしまう。 「……へ?」  よくわからないがアスナは立ち上がると魔法の詠唱に入った。今まで俺が聞いた詠唱の中で一番長い。もしかしたらかなり高位の魔法かもしれない。 「おいおい、上級……いや最上級じゃねぇかよ! ヤバイぜエド」 「まあ良いじゃないですか。見れたのですから」  えっ? 見れればいいの? 逆にどんだけ見たかったんだよ、アスナのパンツ。  俺はアスナの注意を聞き、後ろに後退しながらそう思った。 「――我が水流、汝を滅ぼす……」  そこでアスナの詠唱がようやく終わる。ていうか最後が「汝を滅ぼす」って恐すぎだろ。 「【maximum・クリスタルカレント】」  これは……まずい。  アスナの魔法が完成すると、上空から数多の水の塊が降り注いだ。どれも優に一メートルの大きさで六角形状になっており、先端が鋭く水晶を思わせる。さらにこれらの魔法はフィールド全体に落ちているため、回避はほぼ不可能だ。  どうする! 俺! 「兄さん……これは死ぬかも知れませんね」 「心配するなエド。散るときは一緒だぜ」 「はい……」  エドヴィンはそう返事をすると、俺を見てウインクをしてきた。まだ何かするつもりのようだ。 「失礼します!」  エドヴィンは素早くアルヴィンの後ろに回ると、軽々と持ち上げる。 「えっ!?」 「【秘技・兄さんシールド】!!」 「うぅそぉぉだぁぁぁろおぉぉぉぉぉぉっ!!」  ……はい、そのままアルヴィンはお亡くなりになりました。エドヴィンも【兄さんシールド】では防ぎきれず、あえなく沈。しかし、会場(特に男子)からはグッジョブサインが贈られていた。さながら英雄扱いである。  ちなみに俺はアスナの下なら大丈夫だと思い、急いでアスナに向かってヘッドスライディングした。魔法が終わり、顔をあげると黒い物が……。そのまま没となった。  でも一応アルヴィンとエドヴィンの方が俺より先に負けているので、俺はなんとか予選会を突破した。  ……俺と双子の戦闘は何だったんだろう。アスナの魔法一つで全て終わるなら、最初からそうしておけばよかった。  と今更思うももう過ぎたことであった。
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