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その子は生まれてすぐに両親から引き離されて育てられた。
素質があったのだ。
その子は生まれてすぐに言葉を発した。動物とも話せた。人の心が読めた。
だから魔法使いとして育てられた。
「この植物はどこにたくさんある?」
「南の森の大岩があるところ、そこから東に一里進んだところにそれはたくさんある。でも崖にあるからロープがいるよ」
お店に来ていた人たちの「おおっ」という声。
魔法使いは街で神様のように扱われていた。
探し物、失せ物、運命の相手探し、それ相応の対価を払えば金脈ですら言い当てた。近隣の諸国からは統治の助言をもらうために王様がやって来るほどだった。
魔法使いはまだ子どもだった。今年12になる。
高級なシルク製の紫色のローブを羽織っている姿は神々しく、多くの人が彼の前で願いを乞うた。
魔法使いは多くを語らなかった。人々の願いを受け入れ、答え、教え、財を築いた。
一国を動かせるほどの財を持っていたが、魔法使いには欲がなかった。
ある日、若い商人が顔を見せた。
「何用で」
「これはこれは魔法使い様。先にお言葉をいただくとは恐れ多いことです。もしかすると、魔法使い様なら言わずともわかるのではないですか?」
その商人は偽物の髭をたくわえ、深く帽子をかぶっていた。魔法使いには本当の顔が見えていた。その年齢も、考えていることも。
「その歳で商人をやれるのは凄いな」
魔法使いは商人を褒めた。
「だがこれまでの商談は多く、得を得ていない。若さゆえ欲におぼれ、失敗を繰り返す若商人とは違い、柔軟に、奢らず、商談相手の得を考えて物を売る。おかげで取引は多いが仕事ばかりが増えて、儲けがない。たった一人の家族である妹を食わせていくには少々厳しいといったところか」
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