若商人とちいさな魔法使い

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「……さすがは魔法使い様。感服です」 「お前は自分の商談にもっと儲けが欲しいとは思わない。正直な性格だから変えられない。でも妹にはこれから来る新しい時代を生き抜くために学を受けさせたい。だが知遅れの妹には良い教師というのはなかなかいない、といったところだろう」 「そうです。魔法使い様。僕の妹に合う教師を見つけてほしいのです」 「わかっている。だがそんな教師はどこにもいない」 「……やっぱり」 「ああ。世界中を探しても一番良い教師は私だけだ」 「あなたが?魔法使い様ならば確かに……でも大変ではないですか?」 「なあに。私はもう12になった。魔法使いとしてはそろそろ弟子を作らなければならない歳なのだ。ここをお前にやろう。商談の店とするがよい。そうだな……5年後、また会おうぞ」 そして魔法使いはふっと目の前から消えた。あとに残された若商人は唖然とし、すぐに妹の待つ家へと向かった。やはり妹はいなかった。 さびしくはあったが若商人は魔法使いを信じ、魔法使いのお店で商人として生計を立て始めた。
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