無口な風澄紗夜

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風澄の表情は特に大きな変化はない。 だが少し戸惑ったようで、俺の立ち位置からは見えないその雑誌の紙面と俺の顔を交互に二三度見返して、その雑誌を掲げて表紙を見せてくれる「恐怖、日本の心霊スポット100選関東編」‥‥‥思った以上に変わった子らしい、この歳の女の子が、しかもこんな気味の悪い薬品の匂いが漂うこの科学準備室で、どうしてそんな物を熟読できるだろう。普通はファッション雑誌とかではないのだろうか?。少し変わった子のようだ。すると彼女は立ち尽くしている俺の事が気がかりなのだろうか、彼女の横のパイプ椅子をスッと引いいて俺に座ることを催促してくる。もし地震が起きて戸棚が倒れればカエルのホルマリン漬けがちょうど身に降り注ぐ位置だ。だがそんな可能性は転校初日に奇妙とは言え女の子の隣に座れる機会に比べればどうってことないので俺は何のためらいもなく彼女の隣に遠慮しながらもゆっくりと座る。チラリと雑誌の紙面を横から覗いてみる。やはり中身はアレだ、恐怖を煽るような黒い背景に白字でびっしりと体験談や由来や暗視ゴーグルでみたようなヤケに暗い写真や想像したくなかったがやはり想像どうりだった。
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