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雪弥さんはというと、全然動じることなく抱きつかれたままの状態で彼女を見遣る。
「南、今着いたのか?」
「はい!もー朝比奈部長に会いたくて飛んできちゃいました!」
「廊下は走るな。危ないだろ」
いやいやいや、そこは「離れろ」でしょうが!
心の中でツッコミを入れても、私の存在にすら気づいていない雪弥さんに届くわけもない。
「はーい」
と可愛く甲高い声で返事する彼女。
でも一向に雪弥さんの腕から離れることなく、ともに営業部の中へと入っていった。
な、なんだ、あれ!?
疑問やら嫉妬やら憤りやらでぐちゃぐちゃになる私の頭。
無意識に握った拳が震えそうになる。
「何だか、雲行き怪しいですね」
海江田さんが気遣う中にも興味を隠しきれない声で言った。
「南、来たんだ?」
不意に後ろから投げかけられた声に振り返ると、雪弥さんの片腕とも言うべき部長補佐の新垣さんが立っていた。
そこに海江田さんが「いいところに」と言わんばかりに顔を輝かせながら近寄っていく。
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