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離婚してから母は身を粉にして働いた。
いわゆる、できちゃった結婚だった両親。
母の時代ではまだ認められにくく、ただでさえお嬢様の母は父との交際も反対されていた。
そんな中、私を身籠って反対を押しきって父と一緒になったから、実家とは縁を切られてしまって、離婚しても援助も求められなかった。
それでも母は父からのお金は一切受け取らなかった。
それをするくらいなら死んだほうがマシだと思っていたらしい。
営業の仕事で夜遅くまで働いて、疲れて帰っていた母親は私に決まってこう言った。
「真琴ちゃんは自立した女性になるのよ。男なんて頼りにならないんだから」
そして決まって続く台詞。
「あなたは倫理に背いちゃだめよ。絶対堕ちちゃだめ。約束して」
強く私を見据えて言う母に気圧されて、私はいつも頷くことしかできなかった。
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