信条

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数十分後、報告書を仕上げた私は最後に全店舗にメールを送信してふぅと息を吐いた。 「終わった」 ギギッと椅子の背凭れに身体を倒して背伸びする。 集中していたから気づかなかったが、営業部のフロアには私一人だけしかいなかった。 腕時計を見ると午後十時になったところ。 特に繁忙期でもない今、この時間まで残業している人間はいない。 私は凝った首を回してコキコキ鳴らす。 外回りしたりクレームが入ったりと慌しかったせいか、若干疲れた。 集中が切れた今になって疲労と空腹が一気に身体にくる。 帰る前に、あれ食べよっと。 私はデスクの一番下の引き出しを開けて、その箱を手に取る。 黒い紙製の箱の正体はビターチョコレート。 私は甘いものに目がなくて、自分のデスクにチョコを隠している。 もちろん就業中は食べないが昼休みや残業して疲れた時に食べる用だ。
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