信条

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ビターチョコを一口頂こうとパッケージを開けようとした時、営業部の扉が開く音がした。 「まだ残ってたのか?」 「あ、朝比奈部長!?」 低くて耳心地のよい声に振り返ると朝比奈部長がドアの傍に立っていた。 私は慌ててチョコを鞄の中に突っ込む。 別に終業時間過ぎた会社でチョコを食べても怒られることはないけど、何となく後ろめたくて咄嗟に手が動いていた。 「部長こそ、もう帰られたんじゃ?」 「いや、会議室にいた。俺が残っているとみんな帰りにくいだろ?」 小脇にノート型パソコンと鞄を携えた部長がゆっくりと私のデスクへと歩み寄ってくる。 カツカツと上質な靴の音が静まり返った部屋に響いた。
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