信条

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朝比奈部長はそれ以上何も言わず、自分のデスクにつくと黙々と作業をし出した。 部長が押すキーボードの音に私も落ち込んでいる場合ではないと我に返って、仕事を再開する。 結局終わったのは深夜零時を回った頃で、私は部長に手伝ってもらっただけでなく車で送ってもらった。 当時のことを回想し終えて、私は自分の未熟さに恥ずかしくて顔を下げた。 「あ、あれは忘れてください。まだ何も知らない子供だったんです」 ぼそぼそと言う。 あーできることなら部長の頭の中からその記憶を消してほしい。 なんて思っていると不意に部長が口を開いた。 「晩飯は食ったか?」 「いいえ。まだです」 「じゃあ何か食って帰るか?」 思ってもみない提案に私は動揺して目を丸くした。 まさかの部長からお食事のお誘い。 「い、い、いいんですか?」 「ああ、俺も食って帰ろうと思っていたところだ。もう上がれるか?」 「は、はいっ」 私はパソコンを消して、急いで荷物を纏める。 用意を済ませた私を見て「じゃあ行くか」と先を進む部長。 私はその後をいそいそとついていった。
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