9158人が本棚に入れています
本棚に追加
/1069ページ
営業部に二人で戻ろうとエレベーターを降りた時、営業部の入り口に見慣れた後ろ姿を見つけてドキッと心臓が跳ねる。
「あ、部長ですよ。話しかけてきたらどうですか?」
海江田さんがこそこそと言って肘で私を突っつく。
海江田さんの気遣いは嬉しいけれど、今は冷戦状態だし会社では上司だから気安く声はかけられない。
本当は話しかけたいけどさ。
そう思いつつ、首を横に振った。
「いや、私は……」
「朝比奈部長!」
海江田さんの提案をやんわりと断ろうとしたところで、後ろから私たちを追い抜いていく人影。
目で反射的に追うと少し赤みがかった肩までのストレートの髪が走る彼女の動きに合わせて左右に揺れていて。
品のいいグレーのスーツに身を包んだ彼女は黒のハイヒールで床を鳴らして駆けていって
「会いたかったですー!」
雪弥さんの腕に飛び付いた。
そして、その腕にすりすりと猫が甘えるように頬擦りする。
な、なななななななっ!
あまりの衝撃に私はあんぐり口を開けてその光景を見ているしかできない。
最初のコメントを投稿しよう!