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「新垣さん。誰なんですか、あれ」
「南芽衣（みなみ めい）。アメリカ支社勤務の社員だよ」
「支社の？」
「そう。今度、有名デザイナーとコラボした新製品が出るんだけど、それ、海外が先行で、評判良くて日本でもやることになったんだ。その助っ人として海外支社から数名こっちに呼んでるんだけど、南はその中の一人で朝比奈部長の直属の部下だった。朝比奈部長、向こうじゃけっこう慕われていたんだよ」
「え？本当ですか？」
これには海江田さんだけじゃなくて私も驚いた。
私が入社した時から雪弥さんは厳しくて、慕われるというよりみんなから畏怖されているところがあったから。
慕っていたのなんて私を含めてごく一部。
だから海外支社でも似たような感じなのかと勝手に思っていた。
「あっちじゃ仕事できる朝比奈部長をみんな尊敬しててさ。僕、こっちに来て愕然としたもん。みんな朝比奈部長に対してよそよそし過ぎ。そりゃ出世うんぬんで面白くないんだろうけど。で、向こうで一番朝比奈部長フリークだったのが、南芽衣。本庄さんより三つ下だったかな。小学生の時から向こうで暮らして育ったらしいから初めっから海外支社配属でこっちではほとんど誰も知らないと思う。とりあえず、部長のこと慕ってるよ。多分恋愛的な意味も含めてだけど」
恋愛的な意味も含めて。
その言葉に私はやっぱりと苦々しくなる。
あんな嬉々として腕に抱きつくくらいなんだから容易に予想できたけど、他人の口から聞かされると真実味が増してくる。
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