超短編集

半分こ

　僕は半分こが大嫌いだ。

僕には２つ違いの弟がいる。
弟が生まれる前は全部僕が食べる事ができたのに、弟が生まれてからは、おかずも、お菓子も、半分こ。
だから僕は、また全部食べたいと思っていた。

　ある日突然、弟が交通事故に遭って死亡した。
おかずも、お菓子も、僕が独り占めできるようになった。
でも、何を食べても弟がいた頃より美味しいと感じる事はなかった。
半分こでも、弟と一緒だった食事の方が何倍も美味しいと思った。
僕はそこでやっと、一緒に食べる事の大切さに気付かされたのだ。
それ以来、半分この物を見ると弟がいた頃の食事を思い出してしまう。

　僕は半分こが大嫌いだ。