貴方がいつも遠くて(後編)

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そのスタンスは、27歳になり、飲み友達となった今でもそんなに変わってはいない。 去年の11月俺は久々に失恋した。 取引先の事務の女の子。 もっとも何も行動を起こす前に撃沈したのだが、久々に落ち込んだものだ。 そんなときも千秋と飲んで馬鹿話してれば気が晴れる。 男なら“無二の親友”ってところだ。 本当の男の親友と呼べる奴等は今、離散して近場に残っているのはほとんどいない。 あ、ひとりいた。 うえちんだ。 そのうえちんは酒は全くダメだから数に入れてなかった。 だから最近はもっぱら千秋と飲む機会が多くなっている。 千秋と飲んでいるときはまったく気を遣うこともなく、しかもお互いの好みやツボをよく知っている。 女としてだってそれなりにキレイになってはいるものの 俺はそういうことを全く期待していなかった。 年が明け、会社の部署が統廃合の話が出た。本決まりになれば春から都内勤務。 つまりこの町から俺も出ていくことになる。 仕事は慌ただしくなり、 うえちんが結婚することになり二次会の幹事を頼まれた。 そんな話の愚痴でも話そうかと思っていた今年のバレンタイン 千秋から、まさかのリベンジ 「…あの……もう一度、 立候補してもいいかな?…」 不意討ちを喰らった。
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