貴方がいつも遠くて(後編)

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「よう、なんか久しぶりだな。」 「そうだね。」 「じゃ、行くか。」 元気がないのかと思っていたが、わりといつもの千秋に見える。 無理しているのかもしれないが、無理をしているなら今はそれに合わせて楽しんでいればいい。 今回は、まずイルカ・アシカ等の海獣ショーを見に行った。 席は中央やや左の最前列。 この寒いのにウエットシートだった。 開演前にビニールポンチョが配られた。 最初はコミカルなオットセイ、アシカ、トドの芸。 そしてイルカのジャンプが始まると このあたりに水しぶきが飛んでくる。 イルカはまだいいがシャチの場合水しぶきじゃなくて バケツでぶちまけたような状態となる。 受けまくりのショーが終わってポンチョを脱いだが ポンチョの意味があったのかというくらい濡れた。 「うわ、お前ビショビショじゃねぇか。」 「翔大こそ、どこで泳いできたのよ。」 「なんか子供の頃思い出すな。 そういや女子をからかった奴 おまえ片っ端からプールに突き落としてたよな。」 「な、なにそんな昔のこと。」 「そうそう、あのときのうえちん覚えてるか? お前に落とされた後、プールサイドに上がろうとしたとき 海パンずり落ちて、女子の真ん前で。」 「ああ、うえちん丸出し事件ね。」 「そうそうあれからさ、あいつえらく真面目になっちゃって、 今じゃ高校の数学の先生なんだぜ。」 「そのうえちんが結婚すんでしょ。」 「あ、そうそう。吉永から聞いたか。 1月の雪の日にお前と飲む前に うえちんの妹から相談されてな 2次会の幹事引き受けたんだわ。」 「え、うえちんの妹さん? そうだったんだ。」 「そうそう美紀ちゃんきれいになってさ、うえちんに似ずにね。 でも残念ながらもう2歳の娘がいるんだってさ。 で、ほれ、俺最近忙しいからさ、当日は俺と吉永が仕切るけど 景品やら店の予約やら案内は美紀ちゃんがまとめてくれるんだわ。 既婚者は2次会の段取り判ってるしね。 でも、あんまりまかせっきりじゃ悪いから、 駅の本屋で情報誌見て店とか進行とか決めるの手伝ってあげたんだけどね。」 (ってことは、 あの日の事ってただの勘違い? なんか独りで落ち込んで… 馬鹿みたい。)
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