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「へぇ、なんか優しいじゃん。」
「え?おれ?いつも優しいよ。
女の子には。」
「なにそれ、
私はまるで女の子じゃないみたいじゃない。」
「お、いたいた。
この前のトド。
知ってるか?
トドって英語で北の海のライオンっていうんだぜ。
お前にピッタリだろ。」
「それ、全然うれしくない。」
「そうか?わるいわるい。
オレ的には褒め言葉なんだけどな。
あ、そろそろ腹減ったな。」
「どうする?レストラン入る?」
「そうだな。13時チョット前か。
ちょうどいいな。」
館内にはファーストフード、カフェ、和食系、洋食系とそれなりに揃っている。
俺たちは和食系の店の座敷の個室に入った。
売りはもちろん鮮魚と海の幸
しかし、焼き魚ランチと海鮮丼といういたって普通の昼飯を食べた。
「そうだ、ちょっと話があるんだけど。」
「ん、どうしたの?」
「千秋、お前、今の仕事どうだ?」
「え、どうだって言われても、
別に可もなく不可もなく、かな。」
「やりがいとか、責任あるポジションかとか
もっと簡単にいえば、楽しいかとか。」
「そうねえ、あまり楽しくはないかな。」
「そうか。」
「なにそれ?」
「いや、聞いたかもしれないけど、おれな、4月から東京勤務になるんだ。」
「それ、決まったの。」
「うちの会社の部署の統廃合があって、4月にこっちの半分以上の部署が中央に集められることになって、もし今やってる仕事を続けるなら東京行きは決まりだ。
もちろん、何でもいいから別の事やってでもこっちに残りたいってやつもいる。」
「翔大は、行くんだね。」
「ああ、そうなると思う。」
「送別会、やろうか。」
「送別会か、
それはいいや。
なんかそういうの、苦手だから。」
「そう。」
千秋はやはり寂しそうな感じで少し無口になった。
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