ある夏の日

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「立川は休みだな……」 そう言いながら先生は出席簿にペンを走らせる。 そのまま出席を確認し、ホームルームを終えようとしたその時だった。 ガラッと、教室のドアが勢いよく開かれる。 そこには、息を切らした髪の長い女の子……立川 玲が立っていた。 「はぁっ……はぁっ……す、すいませんっ。遅れました……」 教室中の視線が彼女を見つめる中、先生は呆れたようにため息をつき、立川に席に着くよう促した。 「えー、取りあえず立川は遅刻ということで、今日は欠席者ゼロだ。では、これでショートホームルームを終わる」 起立と礼を終え、教室に和やかなムードが戻る。 一方立川は、まさに全力疾走してきたのだろうか、肩を激しく上下しながら席に座っている。 立川は僕の2つ隣の席だ。 僕が一番窓際の席で、その2つ右隣が彼女の席。 でも席が近いからといって、さっきも言ったが彼女の事を良く知ってるわけではない。 話したこともあまりない。 でも、何故か今は彼女の事が気になった。 今まで彼女は無遅刻無欠席だったが、何か想定外のアクシデントでもあったのだろうか。 無意識の内に、僕は彼女を見ていた。 今まで気にもしていなかったが、こうしてみると結構可愛い部類に入るだろうとは思う。 部類と言う言い方は少し失礼かもしれないが、少なくともルックスは良いのではないだろうか。 ロングヘアーに艶やかな瞳。 顔も丸っぽいわけでもなく、かといって鋭いわけでもなく。とてもスリムな顔立ちだ。 スタイルも悪くない。 胸は少し小さめか……? なんてことを考えている内に、いつの間にか彼女と目が合っていた。 きょとん、とした仕草をする彼女。 目があったらすぐにでも顔を背けようとするはずだった。 でもそれが出来ない。 やがて彼女はニコリと微笑み、そのまま1時限目の準備に取り掛かっていた。
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