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リベラル達四人は、ベルサダムの街を後にし汽車で組織本部へと向かっていた。まだ本部のある首都ル・ヴェルまでの道のりは遠い。
窓際で頬杖をつきながら景色をぼんやり眺めていたリックは、愛用の大きなトランクを机代わりに報告書と格闘しているリベラルに声をかけた。
「…で、その本部とやらへはまだ着かないのか?」
羽根ペンを止め、うーんと背伸びしたリベラルは大きな欠伸をし、首を振った。
「そうですねぇ…。後三時間は列車に揺られ、そこからタクシーに乗り換え…なので。暫くは乗り物さんと仲良しですね」
「マジかよ…」
憂鬱そうに溜息をつくと、また視線を窓の外へと向けた。じっとしていられない体質なんですね、と心の中で思い、リベラルは苦笑いを浮かべる。
「リックさん、列車に乗る前にも一度、ルミナさんが言っていたと思いますが…大事な事なのでもう一度言いますね」
「ああ、あの煩い女。で、何?」
あまり興味がなさそうに視線を窓の外に向けたままで適当に返事を返す。
「僕はあくまで調査員であって、彼女達みたいに執行官ではないんです。調査員は…例えるなら執行官見習いなものだと思って下さい」
ふーん、とまたしても素っ気ない返事が返ってきた。リベラルは構わず続ける。
「ですから…調査員が今回みたいにオーガニクスの方と執行官の方よりも先にDEMOSを倒してしまった、と言うのは今迄にないイレギュラーなケースなんです。ましてや僕は万年調査員、と言うあだ名が付いてた位執行官には不向きだったので恐らく審問会議にかけられると思います」
「審問会議?」
リックは頬杖をついたまま、視線だけリベラルの方へ移した。
「はい。執行官に昇進するかどうか、の審問会議です。会議にかけられる前に改めてリックさんとのリンクした時の共鳴率等の審査があるとは思うのですが」
「…ちょっと待て。それってもう俺はお前のパートナー確定って事なのか?俺は同行するとは言ったが、お前らの事務所に入るとは言ってねーぞ」
申し訳なさそうにリベラルは俯き、小さくすみませんと呟いた。
「…本当に申し訳ありません。ですが、僕自身に決定権はないんです。もし、貴方がどうしてもと仰るなら、何とか上に取り合って貰いますので…」
「…そうしてくれ。もうあんな化け物と殺りあうのは御免だ」
リックが手をヒラヒラさせて今日何度目かの溜息を付くとリベラルの空色の瞳が曇った。
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