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「…DEMOSは、化け物。…そう、ですよね」
自分に言い聞かせるように小さく呟くとリベラルは俯いてしまった。よく事情がわからないリックだったが、何か地雷を踏んだと察したらしく悪かった、とぶっきらぼうに言い放った。
「…?どうして謝るんですか?」
「いや、お前そんなお人好しの塊みたいな性格してるから、その…なんだ。こんな仕事じゃなくてもっと違う仕事見つけたらどうだ?」
「…お人好しの塊…、ですか」
一瞬きょとん、としたリベラルだったが可笑しそうに吹き出した。
「な、なんだよ?」
「いえ。そんな風に見えるなら光栄です」
クスクスと笑うリベラルを他所に、リックの頭の上には大きなハテナマーク。
「前にも言いましたよね?僕、駆け出しですが神父もやってるんです。本部の近くに小さな教会を開いてるんですよ。出来るなら、そちらを天職にしたいですね」
「へぇ…。なら、そっち一筋にすりゃいいじゃねーか。合ってると思うぜ」
リベラルは、にこりと微笑むも首を横に振る。
「僕、幼い頃の記憶がなくて。物心付いた時から、本部でお世話になっていました。ですから、ちゃんと恩返しはしないといけません。…まあ、万年調査員なんですが」
ーー幼い頃の記憶がない。
これ以上踏み込んではいけない、と察したリックは再び視線を窓の外へと送った。気まずい雰囲気が流れる。
「なーに重い空気出してんのよ、辛気臭いわね」
すっかり気まずくなってしまった空気を払うかのように、綺麗なワインレッドの髪の少女ーー、ルミナがぽん、とリベラルの頭を叩いた。ルミナの後ろには、腰まで伸ばした金髪碧眼の少女、ルミナのパートナーのエリスがトレイに紅茶の入ったティーカップを二つ乗せて立っている。
「良かったら紅茶を頂いたので如何ですか?リベラルさんのは、甘々ミルクティーにしておきましたよ」
くす、と微笑みエリスはリベラルとリックにティーカップをそれぞれ手渡した。リベラルは満足そうに受け取ると美味しそうに飲み始めた。一方のリックは受け取りはしたものの、渋い顔をしている。
「もしかして、紅茶…お嫌いでしたか?」
「…貴族様が飲んでるイメージが強くてさ。飲み慣れてないだけ。大丈夫、ちゃんと飲むからさ。サンキュ」
そう言ってリックが一口紅茶をすすると、エリスはほっと胸をなで下ろした。
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