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財布を盗んだ男の追撃を始めて10分が経過した。
どう見ても活動的ではないリベラルの体力は限界を迎え、身体が悲鳴を挙げ始めた。無念そうに、荒々しく肩で息を整えながら地面に片膝を着く。
「はぁ、はぁ…。参りました…。こんな所で、無一文になるなんて…」
無情にも盛大に腹の音が鳴った。
「………、お腹が空いて、力、が………」
半ば呻き声のような声をあげながらリベラルはバタリと地面に倒れ、とうとう力尽きた。
治安の悪い街中に、空腹で力尽きた彼を手助けしようと言う街人はいない。どうやら、この街では人が倒れていようが、のたれ死んでいようが日常茶飯事らしく、気に止める人間は誰一人としていなかった。
「……… 」
ただ一人、偶然通りかかったリベラルと同い年位の青年が、倒れているリベラルを見て、盛大な溜め息をつき、彼の所持品のトランクと共にリベラルの身体を軽々と肩に担いで、人通りの無い路地へとそのまま姿を消したのだったーー。
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