†出逢いと始まり†

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「うーん……」 空腹感で、リベラルの意識は一気に浮上した。上半身だけ起こすと、パサリ、と使い込んだ毛布が落ちた。リベラルは記憶を手繰り寄せる。 確か財布を盗まれ、追いかけたものの見つからず、空腹で路上に倒れた筈。そこからは記憶がない。 「何方かが、助けて下さったんでしょうか…?」 治安が悪い街なのに何故?と疑問を浮かべつつ、辺りを見回す。家ーーと言うより廃墟に少し生活感を出した、的な。とりあえず穴だらけの屋根には大きな布が覆ってあるので雨風は凌げるようにはなっていた。 とりあえずリベラルはボロボロのソファから降り、路上で倒れていた自分を助けてくれたであろう人物を探し始めた。 キィ、と目に付いた立て付けの悪い扉を開けるとキッチンらしき所に立っている人の後ろ姿を見つけた。 ツンツンと跳ねた銀髪が特徴的な青年であった。 「あのーー…」 リベラルが恐る恐る声を掛けてみると青年は振り返り、チラリとリベラルを見た後またすぐにキッチンに視線を戻した。 「貴方が助けて下さったのですか?有難う御座いました」 「腹、減ってんだろ。とりあえず其処座れ」 え?とリベラルが聞き返すと青年は寝てる間も腹の音が凄くうるさかったから、と呟く。リベラルは恥ずかしそうに苦笑し、目の前の少し埃被った椅子に腰掛けた。テーブルにもうっすらと土埃が付いている。特に手入れ等はされてはいないのだろう。 「ほらよ。食料あんまねぇから大した物作れねぇが」 そう言って出されたのはパン二つに、彼が作ったであろう大きな半熟ベーコンエッグ、それに香りの良いコーヒー。一気に涎が出てきた。 「え、あの、これ…っ、頂いても?」 「食わないんだったら俺が食うけど」 リベラルの前にフォークを、自分の目の前にはコーヒーの入ったコップを置き、青年も椅子に腰掛けた。 「頂きますっ!」 目を輝かせながらフォークを取り、リベラルは夢中で食べ始めた。その様子を青年はコーヒーを飲みながら冷ややかに見つめている。 ものの1分で出されたものを平らげたリベラルはご馳走様でした、とぺこりと頭を下げた。 「いやぁ、助かりました。今日朝から本当に何も食べてないのにお財布盗まれちゃって」 お礼の途中にぐうう、とまたリベラルの腹の音が鳴った。青年は溜息をつく。 「………パンならまだあるが…食うか?」 「…すみません…」 青年は立ち上がって壊れかかった戸棚からパンを三つ出してリベラルに手渡した。 「本当に有難う御座います。えーと…貴方が助けて下さったんですよね?」 「偶々見つけちまったからな。あのままじゃ身包み剥がれてミイラになるの確定だったし。幾ら見慣れてるとは言え、んなの見た後だと夢見が悪くなんだろ。飯も不味くなるしな」
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