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「…えっと、じゃあ…リック、さん?改めて助けて頂いて有難うございました」
ワーカホリック、と名乗った青年は別に、と素っ気なく返事すると空いた食器を下げた。
「さん付けしなくていいぜ。慣れてないから背中がムズ痒いわ」
「えーと、多分暫くは無理かと…」
あはは、と頭をかきながらリベラルは苦笑する。一方リックはどかっと椅子に腰掛け、頬杖をつきながらリベラルに冷たい視線を浴びせる。
「んで?行き倒れたお前を助けた礼、なんかしてくれんのか?まさか此のご時世にギブアンドギブってのはねぇだろ、ん?」
「持ち合わせは、生憎全くないんですが…」
申し訳なさそうに呟くリベラルに、リックは溜息まじりに知ってると答えた。リベラルを運ぶ際に所持品チェックはちゃっかり済ませておいたのだ。
「俺、盗賊やって暮らしてんだ。盗賊って言っても片っ端から盗む訳じゃねぇ。ターゲットは偉そうで高飛車なお貴族様のみ、だけどな。…そうだな、お前が文無しなら盗みの手伝いでもして貰おうか」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべたリックに対し、リベラルはええっと声を荒げ、首をぶんぶんと左右に振った。
「むむ、無理です!僕、駆け出しの神父でもあるんです、そんな盗みの手伝いは…」
出来ません、と続けようとしたリベラルをぴしゃりとリックが嗜める。
「ちなみに、お前が食った物は俺の一週間分の食料だったんだぜ。数分で胃袋に消えちまったが。新鮮な卵や肉、牛乳なんざ滅多に拝めねぇ。あのクソ固ぇパンだって、ここいらじゃ貴重だし、お前が使った砂糖だってアホみたいな値段で取り引きされてるんだぜ」
う、とリベラルが言葉に詰まる。
「それを?幾ら腹減りだからっつって一瞬で貴重な食料平らげやがって。俺の仕事が嫌で出来ないっつーけど、お前だって充分俺の家から食料泥棒してんじゃねぇか」
うう、とリベラルは申し訳なさそうに俯いてしまった。もう一息、とリックは畳み掛けるように続ける。
「今丁度狙ってるお宝があるんだよ。1人じゃちょいとばかし、しんどい所なんだ。だから…」
「わかりました、わかりましたよ!お手伝いしますっ」
グサグサと怒涛の言葉攻めが心に刺さる。観念したかのようにリベラルが叫んだ。そうこなくちゃな、とリックはニヤリとほくそ笑む。唸り声をあげながらリベラルは机に突っ伏した。
「ああ、我が主よ。どうかお許し下さい…」
さっきまで幸せそうだったリベラルの姿は何処へやら。一転して気分はブルーになってしまった。
そんな様子のリベラルをお構いなしにリックは上機嫌でひらりと一枚の紙を取り出した。
「ちょっとこれ、見てくれよ。狙ってる屋敷の見取り図と宝の場所なんだ」
リックが広げた紙には、確かに屋敷の見取り図、そして宝の場所であろう所には大きな丸印がつけられていた。
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