存在

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中庭を影から覗き込む。暗さに慣れていたためかそこに誰かが立っているのはハッキリ分かった。 後ろ姿だったからよく分からないが、二本の触角がどこか昆虫を連想させた。 その後ろ姿はどこか悲しさを思わせる。 例えるなら、何らかのミスで自責の念にかられた者の背中と言うべき。 次の瞬間、バッタ怪人は超人的な跳躍で高飛びし闇の中へ消えていった。 彼が消えた後、中庭の敷地におそるおそる近寄って行く。 彼は何を見ていたのだろうか? が、それを目の当たりにした時背筋が凍りつくような感覚が起きた。腰が抜けて立ち上がれない。 悲鳴すらあげられない。 雲に隠れていた月が再び顔を覗かせる。それにより周囲を照らされさっきよりもより鮮明になり私に様々な現実を打ち付けてきた。 荒れ果てた中庭、飛び散る血。 そして左胸を貫かれ絶命している入院患者の姿だった。 To be continued
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