美しき我が故郷

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 しかし、帰還した俺達の目の前に広がる光景は、俺達の知っている地球ではなかった。いくら、出発した当時の地球が存在していない事を覚悟していたとはいえ、ここまで故郷が変貌しているとは、夢にも思わなかった。  俺達はすぐに、政府関係者を問いつめた。どうして、地球がこんなにも変わってしまったのか。事情を知りたかった。だが、向こうから納得のいく答えは返ってこなかった。むしろ、俺達が何故、地球の変貌に驚いているのか、理解できない様子だった。  俺も初めは新たな生活に適用しようと努力はした。宇宙での生活に比べれば、いくらかは良いと思ったから。けれど、この環境の悪いさには耐えられなかった。この受け入れがたい現実から逃げるように、苦楽を共にした宇宙船のところまで戻ってきてしまった。もはや、俺達の知る地球の名残は皮肉にも宇宙船しかなかった。  宇宙船を停泊させている場所に戻ると、そこにはかつての仲間達が集まっていた。どうやら、苦しんでいたのは俺だけではなかったようだ。彼らもまた、故郷の変貌ぶりに耐えることができなかったらしく、宇宙船へと集まってきたらしい。  あれだけ、美しい故郷がこうも無残な姿に成り果ててしまうとは。  誰も耐えることができなかった。我慢することができなかった。  この星は俺達の知っている地球ではない。俺達が旅をしてきた未開の星と同じだ。  俺達は、ここが故郷の地球でないことを確認し合うと、宇宙船の中に残しておいた武器を手に取った。  ここが、地球でないのならば、やることは一つだ。美しかった故郷を取り戻す為に戦うしかない。戦うしかなかった。  戦うことを決めても事は容易には進まない。何せ、俺達とこの星の連中とでは、技術力に数百年という時代の格差がある。それでも、相手の僅かな隙を利用して攻撃を続けた。地味ではあるが、戦力に差がある以上、確実な方法を選び続けるしかなかった。
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