事故

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叫んだおじさんと一緒になって高級車の後部座席のドアを開けると、30代前後の男性が呻いてた。 気を失ってはいないけど額から流れる出血が酷かった。 ハンカチをポケットから取りだして、額に当てながら止血した。 「まだ動かないでね」 前の席を見ると、エアバックが二つとも出てかなりの衝撃だったみたいだけど、「大丈夫です」と声が聞こえた。 前の席のふたりはおじさんと数人の手を借りて車外に出て、タオルやら毛布やらの上に寝かされた。 「……さ、がえ、は?」 わたしの手のひらの下からの声は誰かの名を呼んだ。 「ふたりともケガも酷くないみたい」 言うと、ハンカチの下から「よかった」って聞こえた。 「おい、ねえちゃん、彼も大丈夫そうだし車の外に運ぶぞ」 さっきドアを一緒に開けたおじさんが近付いてきて、 「にいチャン、体少し動かすぞ」 少し強引な口調で告げ動かすと、目の前の彼は左肩を押さえた。 「肩をやられたか…わかった。なるべく動かさないように外へ運び出すから。ねぇチャン、肩支えてやってくれ」 数人がかりで彼を車外に抱えあげた。 なるべく力を入れないようにしたつもりだけど、整った彼の瞼がきつく締まった。
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