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「真由、何をボーッと見てるの?」
話しかけられてはじめて英語の授業が終わっていたことに気がついた。
「あれ?いつの間に英語終わってたの?」
驚いた。
始まったばかりだと思ってたのに一時間も経っていたなんて。
順子がずいっと身を乗り出して机に頬づえをついて、「何を考え事してたの?」と、わたしの顔を覗き込んだ。
「昨日、本屋に行く途中で車同士がぶつかる事故を見たんだけどね、その事故にあった車がすごい高級車だったの」
「ふーん、それで?」
「その車に乗ってた人なんだけど、どこかで見たことがあるような気がして、でもそんな高級車に乗るような知り合いなんていないし」
「ふーん?その高級車に乗ってた人が事故に遭っててそれから?」
「通りかかった知らないおじさんと車の中から助けたって言うのは大げさだけど、切れた額をハンカチで押さえて救急車が来るまでついてた」
「へえ、昨日そんなことがあったんだ。その事故に遭って助けた人がどこかで見たことがある。と。そのひとって男でしょ」
「なんでわかるの?」
順子とてるちゃんは顔をお互いにくっつけるようにしてクスクス笑ってる。
「救急隊員がそのひとの名前くらい訊いたでしょ?覚えてないの?」
「あ、」
覚えてる。
「確か…つきのりゅういちろうって」
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