花火大会の夜

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戸惑うように触れる。 「…さが、え、さん?」 力が入ってく。 「……俺じゃ、ダメ、か?」 耳元で震えて絞り出すような声。 耳に切ない吐息が触れた。 その時、 ぐいっ、いきなり腕を後ろから引っ張られてわたしを包んでいた寒河江さんが消えた。 背後から息を荒げた誰かに怖いほどの力で抱きすくめられた。 「龍一郎?さん?」 肩が上下してる。 抱きしめたその肩が小刻みに震えてた。 龍一郎さんの焦った眼差し、髪が雨に濡れその先から雫が垂れた。 「寒河江っ!」 突き飛ばされた寒河江さんは頭を振るのを龍一郎さんが睨みつけた。 「寒河江、おまえ、また!」 「いままでとは違う。本気だ」 寒河江さんは口元を拭って立ち上がった。
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