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久しぶりに家に姿を見せた寒河江さんはやつれて見えた。
心なしか顔色も悪い。
「寒河江さん、もしかしたら風邪ひいてますか?」
「……いや、少し熱っぽいだけ。薬を飲んできたから大丈夫」
大丈夫って言ったけど、それにしてもだるそうに見える。
それにしても、龍一郎さんは何を怒ってるのか寒河江さんには冷たい態度だった。
寒河江さんもいつもの砕けた雰囲気はない。
場を和まそうと、少ししてお茶を煎れて持ってくと、手元が狂って寒河江さんに差し出したお茶をこぼしてしまった。
「ごめんなさいっ、すぐ拭くから!」
「このぐらい平気だよ」
溢したお茶を拭いているうちに、寒河江さんの体が熱いことに気づいた。
「やだ、寒河江さんすごい熱!」
額に触れるとものすごく熱かった。
すぐにソファーに横にさせて熱を測ると38度を軽く越えてる。
寒河江さんは最初起き上がろうとしてたけど限界だったのか、しばらくするとおとなしくなった。
ぐったりと横たわる体にブランケットを掛ける。
「少し休ませてれば落ち着くだろ?」
いつもは仲のいい龍一郎さんがやっぱりそっけない。
「寒河江さんと何かあったの?」
「何もない。ただ……」
龍一郎さんが眉を寄せてその腕にぎゅっと抱き締められた。
「龍一郎、さん?」
強くなる力に戸惑いながらも、その背中に手を回して抱き締め返す。
う、……ん
寒河江さんの苦しそうな声が聞こえてすぐに離れてソファー前に膝をついて顔を覗き込む。
「あの……寒河江さん、だいじょうぶ?」
「……真由さん?……あ、これは、夢か、夢だよな。だが、夢でもいい」
突然、手を伸ばし抱き寄せられて、潤んだ目で熱い息をこぼす寒河江さんにくちびるを塞がれた。
!!
え!?
頭の中が真っ白になる。
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