桜の木の下で

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今年はゴールデンウィークが過ぎても桜が咲き残ってた。 風が吹く度に降り注ぐ淡い色した花びらがとてもきれい。 見上げながら桜の校門を通り抜けようとした時、すぐそばにツートンの高級車が停車していたことに気づいた。 学園前にたくさんの車が送り迎えにくるけどその車もその中の一台みたい。 「あの、すいませんが、」 突然、呼び止められて振り返る。 30代半ばくらいの丸眼鏡をかけた品の良さそうな男性が立っていた。 「突然、声をお掛けし申し訳ありません」 丸眼鏡紳士は柔らかい笑みを浮かべた。 「わたしはある邸に仕えている者で、丸井と申します。この度は主人よりお預かりした物がありまして、それをあなた様に見ていただきたいのですが。」 よろしいでしょうか。 と、白い手袋をしたその手にはクリーニングに出されたハンカチがあった。 あ、 「わたしのハンカチ」 確かにわたしのだ。ピンクの生地に白い鳥の刺繍が施されている。縁はレースで飾られてる。 一番のお気に入りのハンカチ。 思わず顔を上げた。 「そうですか。よかったです。それではお名前をうかがってもよろしいですか?このハンカチにはイニシャルでM、Aとあるのですが」 丸眼鏡に隠された瞳の奥が光った。
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