3日目

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朝の慌ただしさの中、食卓の準備もでき、和馬が母屋から戻って来るのを待っていると、和馬が慌てたようにリビングに入って来る。 「礼服出してくれ、今夜佐久間のお袋さんの通夜がある。仕事帰りに寄ってくる」 「えっ」 思いがけない話に、思わず聞き返すと、母屋で姑が新聞のお悔やみ欄に載っていると話していたらしい。 急いでリビングのセンターテーブルに、置いたままになっている新聞を開く。 そこには確かに佐久間さんちの通夜の事が載っていた。 まさか、今の状態で公に葬儀をする等と、思いもしていなかっただけに、言葉が出ない。 活字を目にしても、信じられない有り様だ。 「行くの?」 「あぁ、新聞に載せるのなら、何か事情があるんだろう。行ってみるさ」 どうする事が良い事なのか分からずに、判断が鈍る。 クローゼットに向かい、礼服の準備をしながら、混乱した頭を整理する。 和馬が行くと判断したのなら、行くなと言っても無駄である。 私は何を言えば良い? 礼服一式を抱えて戻り、改めて和馬を見ると、香典の準備をしていた。 「あのさ、通夜の終わり頃に行って見れば? 佐久間さんが、話し掛けて来なければ、なにも言わずに帰っておいでよね」 「あぁ、そうする」 それでも、何だか腑に落ちなくて、モヤモヤしたまま和馬を送り出す。 30分違いで颯馬を送るため、玄関ポーチまで出ると、姑が外に出ていた。 「おはようございます」 「真理子さん、おはよう」 挨拶をしていると、近所の子供達が集合する。 いってきますの可愛い声に、行ってらっしゃいと答える。その姿が見えなくなった途端、姑が話し掛けてきた。 「和馬、今夜お通夜に行くんでしょう?」 「はい」 「そうよね。友達だもの、励ましてあげなくちゃ。私だったら、辛かったわよねって言って貰いたいもの」 姑の言葉に、愕然とする。励ますと言うのは分かるが、今がその時なのだろうか? 加害者と被害者を同時に親からだしたのだ。それから3日しか経っていない。 まして、同居の上の老老介護の結末だ、お前達何をしてたんだと、責められてもおかしくない。 そんな時に慰められても、聞く耳等無いのではないか。煩わしいだけでは無いか? 様々な思いが頭を駆け巡る。 なにも言わない私に気を良くしたのか、姑は和馬にもゆっくり話して来いと言っておいたと言って、家の中に入って行く。
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