3日目

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和馬の夕食の準備をする手を止め、ソファに座る。 待ってましたと謂わんばかりに、和馬の口が動く。 「酷い話さ。通夜が終った頃に行ったら、佐久間が直ぐに近寄ってきてさ、今回の事、全部出鱈目だって言うんだ」 和馬の話を纏めると、佐久間さんのお父さんは、お母さんを殺して居なかった。 本当は、二人で心中するつもりだったらしい。 お父さん自身、まだ混乱の最中で、詳しい事は聞けていないが、二人で首を吊ろうとして、お父さんが使ったネクタイだけが切れてしまい、助かったらしい。 すぐ側には、徐々に冷たくなっていく妻の身体があり、後を追って、もう一度と思うが、失敗したために恐怖が先に立って、どうしても死ねなかったようだ。 お父さんは、せめてもとお母さんの遺体を降ろし、布団に寝かせた。 その後の事は、ハッキリと覚えて居ないと言う。 そして朝になり佐久間さんが、お母さんの異変に気付き、救急車を呼んだ。 そこから警察に連絡が行き、佐久間さんの家に警官が駆けつけた。 事情を聞くためにお父さんが連行されたため、それが逮捕と言う形で報道されてしまったと言う事だった。 佐久間さんにすれば、心中など思いもしないことで、お母さんは、足が不自由と言っても、後の事は何でも自分で出来た為、そこまで思い詰めて居るとは、感じて居なかったようだ。 ニュースの中には、寝たきりのような事や、お父さんが自白したと言うような事まで、書かれて居ただけに、俄に信じられないような真実に、衝撃を受ける。 それと同時に、寒気がする。 如何に自分達がマスコミと言うものを信じ、疑う事なく受け入れているのかと言う事を痛感させられた。 今回のような誤報でも、紙面や画面に出る事で、闇雲に信じてしまう。 そのあげく振り回され、要らぬ事で悩んでしまう。 それはきっと私だけでは無いだろう。 そして、今回の事で佐久間家が受けた被害は、想像を絶する。 情報社会の恐ろしさを、まざまざと見せつけられた。 誤報を流したマスコミからは、後日訂正とお詫びの文章を発表しますと、だけ話があったようだ。 だが、それだけではどうにもならない事があるように思えてならない。 便利なようで怖い世の中だ。 いくら自分達が気を付けて居ても、どうにもならない人災がある。 ただ、佐久間さんの家族が1日でも早く元の生活に戻れるように祈るしかない。
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