1日目

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休みの日でも、良く分からないアニメを見るために、早起きするのだから、大したものだと呆れながらリビングを横切る。 ダイニングに行くと、主人の和馬が釣り番組に夢中になっている。 蛙の子は蛙、つい吹き出しそうになりながら、和馬に姑の来訪を告げる。 何だよと、週に一度の楽しみを邪魔され、面倒臭そうに出て行く和馬の後を追って、クローゼットに向かう。 着替えを済ませ、ベットメイクをして、ダイニングに戻ると、和馬は釣り番組はどうしたのか、 パソコンにかじり付いている。 「どうしたの? 何か頼まれた?」 和馬の両親は、よく家庭菜園の野菜の育て方等を調べてくれと言ってくる。今日もその類いだろうとたかを括っていた私の耳に、真面目な和馬の声が届く。 朝食の支度の為に、対面式キッチンにいた私は、カウンター越しに和馬の顔を見た。 「佐久間の親父さんが、お袋さんを殺したらしい」 「えっ、ちょっと待って。お袋さんって、佐久間さんのお母さん? それとも、お婆さん?」 「お袋さん」 予想だにしなかった和馬の話に、思考が追い付かなくなる。 佐久間さんは、和馬の高校時代からの親友だ。 数年前に家を建て、首都圏から日本海側にある地方都市のこの町に、Uターンするまでは、佐久間さんは東京出張の度に、家に泊まりに来ていたので、私も知らない人物では無い。 佐久間さんのお父さんは存じ上げないが、佐久間さん自身は、いたって温厚な人だ。 そんな佐久間さんを育てた人なのだから、好人物であると私は思っていた。 状況がまるで理解出来なくて、和馬の側に行き、パソコンの画面を覗く。 そこには・・・
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