一本の電話から

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わかってる わかってるよ、久美。 あたしが一番、そうなりたいって思ってる。 ずっとずっと、思ってる。   「……ごめん久美。今日はなんか、いろいろ思い出しちゃって。さっきのセクハラ男が、健なんて言うからさ」 「…」 「名前聞いたとき、固まっちゃったよ、あはは!」 おどけたように言っても、久美は笑わない。 おまけに心配するような目をして、大丈夫?なんて聞いてくる始末。 あたしは、強く握る久美の手をほどくように、放した。 「もう、過去の話。新しい恋をするんだから」 そう、過去。 前だけ見て、振り返らない。 あたしが力強く見つめると、久美は頷いた。
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