一本の電話から

19/36

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
少し冷たい、ちょうどいい風に吹かれて あたし達は駅に向かう。 「明日も仕事だし、頑張らないと」 明日のことを考えると、さっきまで高揚していた気持ちが一気に下がっていく。 ああ、休みたいな…。 「そういえば、塔子ってまだパートだっけ?」 「……まあ、ね」 融通がきいて、当たり障りのない パートの事務員は、楽チンで。 フラフラしているあたしにとって、本当にありがたい。 「早く定職ついたほうがいんじゃない?この先何があるかわかったもんじゃないよ」   時折おかあさんのように心配する久美に、愛想笑いだけ返すと 久美は、それ以上何も言ってこない。 そりゃ、ね。正社員になれるなら、なりたい。 だけど、そこまで踏み込むことが出来ないでいる、あたしの弱さを 久美は理解してくれていて。 責任の咎められないこのポジションが、あたしには心地がよかった。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加