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「ーーーあ、」
マンションの灯りが見えた時
足がツンと止まる。
ふと落とした目線に、奪われてしまった。
小高い土手のわき道。
あたしは、とっとっ、と小走りをして
バカみたいにめかし込んできた、ピンク色のワンピースの事も忘れて
その場にしゃがんだ。
「やっぱり、ヤマブキソウだ」
草むらに紛れて寄り添うように咲く
小さくて、黄色い花。
もう、そんな季節、か。
そっと触れたヤマブキソウを、ひとつ摘まんだ。
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