一本の電話から

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「俺の名前、健だから」 ちょっとだけ座る位置をずらしていた時に、男が言って。 一瞬、体が固まった。 「俺、最初から塔子ちゃんの事気に入ってたんだよね~」 「…」 どうしよう。嬉しくない。 ていうかむしろ、気持ち悪くなってきた。 あ、顔に出そう。 グラスを手に取り、氷の溶けた薄いカシスを飲みこむ。 久美の方をチラリと見ると、楽しそうに話してるし。 つまんない。 あ、カシス無くなっ――― 「……抜け出す?」 肩に手を置かれ 耳元で聞こえた男の甘い声に… ゾクリとした。 「私に触れるなーーーっ!」 .
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