0人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
彼は夢を見ていた。
何故これが夢だと解ったのか?
それは、昔から繰り返し繰り返し。
何度も何度も見ているからだ。
家の床板の裂け目の中。
ズルリズルリと這いずるような音だけが永遠に響く暗い空間。
彼はオクス。
辺境の村出身者で、生涯村から出る事など普通だったら無かっただろう。
だが、彼が8つになった夜。
巨大なモンスターが近くの沼地に住み着いたらしく、彼を残して全ての村人が喰われてしまった。
翌朝、偶然立ち寄った行商人に助けられ、行く宛もなかった彼は、中央都市の孤児院に預けられる事になる。
この孤児院でも、何度も見ていた夢だった。
…そして今も、夢に苦しめられている。
グラグラと視界が揺れる。
一声でもあげてしまえば、自分も喰われてしまうかもしれないという恐怖心から、身体が震える。
そして、だんだんと揺れが激しくなって行く。
もうダメかもしれない。
そう思った時…。
最初のコメントを投稿しよう!