序章と出発

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彼は夢を見ていた。 何故これが夢だと解ったのか? それは、昔から繰り返し繰り返し。 何度も何度も見ているからだ。 家の床板の裂け目の中。 ズルリズルリと這いずるような音だけが永遠に響く暗い空間。 彼はオクス。 辺境の村出身者で、生涯村から出る事など普通だったら無かっただろう。 だが、彼が8つになった夜。 巨大なモンスターが近くの沼地に住み着いたらしく、彼を残して全ての村人が喰われてしまった。 翌朝、偶然立ち寄った行商人に助けられ、行く宛もなかった彼は、中央都市の孤児院に預けられる事になる。 この孤児院でも、何度も見ていた夢だった。 …そして今も、夢に苦しめられている。 グラグラと視界が揺れる。 一声でもあげてしまえば、自分も喰われてしまうかもしれないという恐怖心から、身体が震える。 そして、だんだんと揺れが激しくなって行く。 もうダメかもしれない。 そう思った時…。
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